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インク一滴

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逢えない時に。



逢えない時に思い出すのは。。。

ひょろりとした後ろ姿、さらさらの髪のうなじ。
うつむく横顔、細長い指。。。

笑った私を映す眼鏡の奥の瞳。




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小さなこと。


付き合い始めた頃。
彼の胸ポケットにある日突然ドイツ製のカジュアルな黄色い万年筆が刺さっていた。
私が職場で好んで使っているシャープペンシルと同じブランドの色違い。
「あ!同じ!オレも使ってんの!」
という無言のメッセージだった。

私はそのブランドの紺色のシャープペンシルを使っていた。
少し男子っぽい選択かもしれない。
似た趣味である事が嬉しかった。
持ち物を含めて観察されていることも、嬉しかった。

恋の始まりというのはちょっとしたことがとても嬉しい。
箸が転がっても笑ってしまうくらいの振り幅かもしれない。。。

そのシャープペンシルは壊れてしまい、今は色違いを使っている。
なぜかそのシャープペンシルはとても壊れやすい。(気がする)






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レモンウエハース



生活を共にしない。
結婚なんて考えていない。

恋愛の口当たりよく美味しい所だけ味わっている。
サクサク甘酸っぱいレモンウエハースのように。

噛みごたえがなく、サクサク、ふわふわ。。。
すぐに溶けてしまう。

言い訳かもしれない。
逢えない時間はとても長くて、
各方面に内緒にしなくてはならなくて。。。

秘密にしているからより甘くて、
自分で自分を縛るから、より酸っぱい。
甘美な苦みもそこにはある。

確かなことは、ひとりでは行けない場所があること。
皆仲良く、でも行けない。
ふたりきりじゃないといけない。
彼じゃないといけない。





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Love is blind.


恋している。

大きな声で言えないけれども。

彼に家庭の事を聞いた事が無い。
私には関係ないことだと思っているから。。。
彼も家庭のことは言わない。
(あ、母親の事は言う。)
これは大人のずるさかもしれないけれど、
暗黙の了解で、2人の関係性には必要ないことなのだろう。

諸般の事情で、人に知れない様にするために、
とても注意して行動している。

たぶんどこへもたどり着けない私たち。

それでもなんとかして2人で過ごす時間を作り、
ひっそりと逢瀬を重ねる。
今の所は、諸々の苦労よりも逢いたいというエネルギーが勝っている。

ただ、冷静なもうひとりの自分がいて、
いつかは終わる関係だと悟ってもいる。

盲目じゃない。それでも恋と言えるのだろうか。。。



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紫陽花色のお土産。


お土産なんていいからと、いつも言っている。
でも時々買って来てくれる。

小さなお土産。
紫陽花色のきれいな金平糖。。。

出張中、「紫陽花の季節は終わったのかしら」
ってなことをメールしようか迷ってやめた。


それなのに、なんとなく以心伝心。。。
同じ事を考えてるな、っていうことがよくある。
好き嫌いが激しいところも似ている。

なんとなく風貌も似ているらしい。
卵の片割れだろうか。。。



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