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インク一滴

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春近い日に。



敬愛するピアニストであるのに、リサイタルへ出向くのは始めてだった。
チャンスはあった。
4年前、同日同時刻、同じコンサートホールの別なホールで
行なわれたレオンハルトの方を選択した。
2年前企画されていた、2日間連続のショパン。
来日は叶わなかった。

マリア・ジョアオ・ピリス。
クール、知的、繊細。
私が抱く彼女のイメージ。


小柄でショートカットが潔い。
ドレスはフォークロアっぽい。
7分袖のカットソーを重ねていて、ピリスらしいと思った。


シューベルトの最初の一音に、早くも感極まってこみ上げるものがあった。
あとは、空気を震わせる音の粒子に体も心も委ねる。
チェリストが退席し、聞き慣れたブラームスも快かった。

休憩の後、メンデルスゾーンとブラームス。
呼吸をするのももったいない。
この空気感を乱したくない。
咳払いが気になる。。。

少し離れた席に付き添い業務のラブラドールレトリバーがいて、
静かに臥せていた。

アンコール。
バッハが何となく意外だった。
バッハは、自分がとても辛い時期によく聞いていて、
淡々としたリズムが染み入ってきて、また涙がこぼれそうになった。
もうひとつアンコール。
カタルーニャのフォークロア。
美しい旋律。
ホールが割れそうな拍手で包まれる間、ラブラドールがこちらを向いていて、
黒い瞳と見つめ合った。
ピリスを聴く事ができる、特別なラブラドール、
君はなんてラッキーなんでしょうか。

ピリスと同じ時代に生きていられることに感謝し、
まだ雪の残る公園を歩いて帰路につく。









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