インク一滴

大きな手のひらにつながる繊細な指先。
少し厚めの唇。
薄めで張りのある胸とお腹。
それらによって私はとかされていく。
覆い被られて、彼の体に閉じ込められているようになるのがたまらなくて、
ふたりの体の大きさのバランスに感謝する。
小さくて申し訳ないような胸を、彼は美味しそうに食べてくれる。
その表情がまた私の心を動かす。
愛おしい人の、愛おしさを感じる表情。

両手で頬を包み込むようにしてそっと唇を重ねる。
柔らかい唇の感触、大きな手の感触。。。
息づかいやお互いの気持も交換し合っているように思える愛おしい行為。
舌で口腔を探られて、お互いの唾液を絡め合って交換しあう。
普段は見せない所を舌で確認されることの淫靡さ。
首から上だけの刺激なのに、こんなに感じてしまう。
こんなに官能的なキスを交わせる彼の虜になってしまっている。

彼のキスを想像しただけで、気持よくなってしまう。。。

実は最初のキスで、もうとろけてしまう。
親指と人差し指だけで顎を持ち上げられて、そっと粘膜が触れ合うだけ。
次は両手で頬を包むようにされて舌を絡め合う。
微妙に温度差のある皮膚と粘膜が触れ、混ざり合ってふたりの体温を均一にしようとする。
。。。ひとつになろうとする。

これから始まる事への期待感。

唇で挟まれる唇。
その唇で体の色々な所を。。。
と想像してしまう。

指でまさぐられた時には花びらはヌルヌルになっていて恥ずかしい。
キスだけなのに、こんなに。。。

その指を舐めて、柔らかな愛撫が始まる。。。

鼻と鼻、額と額をそっとくっつける。
キスの前、キスの後。。。
小さなフレームにそっと収まるような距離に近づく。
ふたつの鼻と額で縁取られる小さな空間が心地よい。

普段は他人に触れられたり接近される事を好まない私だが、
好きな人には沢山触れられたい。
もっと、深いところまで。

鼻と鼻を軽く合わせるキス。
背中と背中を合わせて体温の交換。

一緒に暮らすまで、猫がこんなに愛情深い生き物だと知らなかった。
普段はクールでそっけないのに、気が向くと
人（猫？）が変わった様にベタベタくっついてくる。



鼻キスは恋人同士の行為。
愛おしさも感じ、次のより深いキスへの始まりにもなる。
鼻をくっつけ合い、この至近距離に２人でいる事を確認し、
匂いを確かめ、もっと深いところまで来てほしいと思いながら
背中に腕を回す。
始まりの行為として、とても好きだ。

猫とも鼻キスしていることを、恋人は多分知らない。。。