インク一滴

彼に覆いかぶさっていると、こちらが攻められている時とは違って少し余裕ができる。

彼を見つめて、両手で頬を包み、頭を撫でて耳にキス。。。
唇をついばむような柔らかなキス、頭を抱えて頬ずり。。。

大好きで愛おしくてたまらない。
ポーカーフェイスで隠していてもわかってしまいそう。
上になるとなぜかいろいろできてしまう。

彼自身に私の手を添えて、腰を沈める。
深く突き刺さるものが、奥まで優しく強く愛撫する。
気持まで優しく、なでられる。
彼の全てを私の全てで包みたい。
深く溶け合って、離れられなくなってしまいたい。

愛し合ったあと、体に少しの変化が見られる。

乳首が紅く染まる。
太腿の内側の筋肉が痛くなる。

眠くなるので眠りに落ちながらニヤニヤする。。。

たくさん吸われて紅くなった胸。
愛し合った痕跡を、その時間を思い出して
ニヤニヤしながら見つめたり、なでたりしてみる。

鞭や縄の痕を嬉しく思うM女性の気持が少しわかった様な気がした。

しんと鎮まった公園の、柔らかな雪をまとった木々。

藍色の空に浮かぶオレンジ色の下弦の月。

夜の入り口に立って、微かな春の匂いをかごうとしている。

お風呂上がりの濡れた頭をタオルでくしゃくしゃっと拭いてくれたり、
両手で頬を包み込んでふわりとした優しいキスをくれたり。
後ろからそっと抱きしめて触れるか触れないかくらいの圧力で触れる唇。
閉じ込めるようにきつく抱いて、彼のものである事を感じさせてくれる時間。。。

彼の与えてくれる色々な圧力、感触。その底にある思い。
全てが私には嬉しくかけがえのないもの。
彼に抱きしめられる自分が愛おしい。
抱きしめ合っていると、どこまでが自分なのか、彼と自分に境界線などあるのか、
わからなくなってくる。
わからなくていいと思える。

デートが終わってひとり帰路につく。
少し痛みを感じたりしながら。

柔らかく抱きしめられた彼の力の加減、
大切なものを包み込む様な両手の感触。。。

私の想いと同じくらい、もしかしたらそれより強いかもしれない
彼の気持ちに気づいて、唐突に涙がこぼれた。

一緒にはどこへも辿り着けないけれど、
大好き、と改めて感じた。